なぜ使う?思春期の子と見つけるデジタル活用の「目的」と質の高いルール
思春期のお子様のデジタル利用について、時間ばかり気にしてしまい、どうすれば質の高い利用につながるのか、あるいはそもそも何のためにデジタルを使っているのか、漠然とした不安を感じている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。単純な時間制限だけでは、お子様の納得が得られにくく、時には反発を招いてしまうこともあります。
この記事では、思春期のお子様とのデジタルルール作りにおいて、「何のために使うのか」というデジタル利用の「目的」を親子で共有することの重要性と、その話し合いから無理なく質の高いルールへとつなげるためのステップをご紹介します。目的から考えることで、お子様の自律的な利用を促し、より前向きで建設的なデジタルとの関わり方を親子で見つけるヒントとなれば幸いです。
デジタル利用の「目的」を共有することの重要性
なぜ、時間や内容の制限よりも先に「目的」を考えることが重要なのでしょうか。それにはいくつかの理由があります。
1. お子様の納得感が高まる
ルールが一方的に決められるのではなく、「何のためにデジタルを使うのか」という共通の認識から生まれたものである場合、お子様はルールを受け入れやすくなります。「この目的のためには、こういう使い方が効率的だね」「こういう使い方は目的から外れるね」といったように、ルールが単なる禁止事項ではなく、目標達成のための道筋として捉えられるようになるためです。
2. 自律的な利用を促す
目的が明確であれば、お子様自身がその目的に沿った使い方を主体的に判断できるようになります。「友達と情報交換をする」という目的があれば、だらだらとSNSを見るのではなく、必要な情報だけを効率的に得る、といった行動につながりやすくなります。親が常に監視していなくても、お子様自身が目的を意識して行動するようになるのです。
3. デジタル活用の可能性を広げる
デジタルは単なる娯楽ツールではありません。情報収集、学習、創造活動、自己表現など、様々な可能性を秘めています。「ゲームで友達と協力する」「オンラインで調べものをする」「動画編集のスキルを磨く」といった目的を明確にすることで、お子様はデジタルをより建設的で発展的な形で活用できるようになります。
親子で「目的」を話し合うステップ
では、実際どのように親子で「目的」について話し合えば良いのでしょうか。無理なく進めるためのステップをご紹介します。
ステップ1:まずは親自身が考えてみる
いきなりお子様に問いかける前に、まずは保護者自身が、お子様がどのような目的でデジタルを利用しているのか、あるいはどのような目的で利用してほしいと願っているのか、考えてみましょう。 * お子様は主に何に時間を使っているか?(ゲーム、SNS、動画視聴、学習、調べものなど) * それぞれの利用に対して、どのような目的があると考えられるか?(友達とのコミュニケーション、情報収集、気分転換、スキルアップなど) * 保護者として、お子様にデジタルをどのように活用してほしいか?(学習の補助、興味関心の探求、創造性の発揮など)
この段階で、決めつけではなく、あくまで「可能性」として考えておくことが大切です。
ステップ2:お子様の「なぜ?」に耳を傾ける
次に、お子様とデジタルについて話す機会を持ちます。この時、頭ごなしに「使いすぎだ」「何をやっているんだ」と問い詰めるのではなく、「最近、スマホでよく〇〇を見ているけど、楽しい?」「あのゲーム、どこが面白いの?」といったように、お子様の興味関心に寄り添いながら、「なぜそれを使っているのか」という「目的」や「理由」に自然と話が向かうように促します。
「友達と流行りの話題についていけないと困るから」「このゲームで友達と協力するのが面白いんだ」「勉強で分からないことをすぐに調べられるから」など、お子様なりの目的や理由があるはずです。まずは、それらを否定せず、じっくりと耳を傾ける姿勢が重要です。
ステップ3:共通認識としての「目的」を探る
お子様の意見を聞いた上で、保護者自身の考えも伝えつつ、親子で共通認識としての「目的」を見つけていきます。例えば、「友達との良い関係を保つためにSNSを使う」という目的は共通認識にしやすいかもしれません。「調べものをして知識を増やす」「気分転換をしてリフレッシュする」といった目的も考えられます。
いくつかの目的が見つかったら、それを言葉にして明確にしておくと、後のルール作りに役立ちます。「わが家では、デジタルを『友達と楽しくつながるため』と『知りたいことを調べるため』に使うことを大切にしようね」のように、具体的な言葉にして共有します。
ステップ4:目的達成のためのルールを考える
目的が明確になったら、その目的を達成するために、どのようなルールがあれば良いかを親子で一緒に考えます。
例えば、目的が「友達と楽しくつながるため」であれば、 * 「就寝時間を守るために、夜〇時以降は友達との連絡は控える」 * 「対面での会話も大切にするために、食事中はスマホを使わない」 * 「誤解を防ぐために、悪口や不確かな情報は書き込まない」 といったルールが考えられます。
目的が「知りたいことを調べるため」であれば、 * 「集中して調べる時間を確保するために、〇時から〇時までは通知をオフにする」 * 「信頼できる情報源を見分ける力をつけるために、保護者も一緒に見る機会を作る」 といったルールが考えられます。
このように、目的を起点にすることで、ルールが「禁止」ではなく「目的を達成するための手段」として位置づけられ、より建設的な話し合いが可能になります。
自律的な利用を促す声かけと考え方
目的ベースのルール作りは、お子様の自律を育むプロセスでもあります。日々の声かけや保護者の考え方も重要です。
- 「目的を意識しているね」と認める: お子様が目的を意識した行動(例: 調べものをするためにゲームを中断した)をとった際には、「〇〇をするために△△できたんだね。目的を意識してて素晴らしいね」といったように、具体的に認め、褒めることで、自律的な行動を強化します。
- 「どうすれば目的が達成できる?」と問いかける: ルールが守られなかった場合でも、一方的に叱るのではなく、「目的を達成するためには、どうすれば良かったかな?」「この使い方だと、どんな影響がありそうかな?」と問いかけ、お子様自身に考えさせる機会を与えます。
- 失敗から学ぶ機会とする: うまくいかないことがあっても、それは失敗ではなく、学びの機会と捉えます。「今回はうまくいかなかったけど、次はどうすればもっと目的に近づけるかな?」と一緒に考え、次に活かすことを促します。
他の家庭の事例から学ぶ
目的からデジタルルールを決めている家庭では、以下のような例が見られます。
- 事例1(中学生の例): 「デジタルは『学習効率アップ』と『趣味を深める』ために使う」という目的を共有。学習時間中は通知をオフ、趣味関連の動画視聴は時間を決める、といったルールを導入。分からないことはすぐに調べられるようになった一方、娯楽利用の時間の使い方も自己管理できるようになってきた。
- 事例2(高校生の例): 「デジタルは『友達とのコミュニケーション』と『情報収集による将来の選択肢を広げること』のために使う」という目的を設定。SNSでのやり取りは夜遅くならないように配慮しつつ、興味のある大学や仕事について積極的にオンラインで調べる時間を持つようになった。
これらの事例のように、目的は家庭や個々のお子様によって様々です。大切なのは、親子で一緒に考え、共有することです。
まとめ
思春期のお子様とのデジタルルール作りは、単なる時間制限に終始するのではなく、「何のためにデジタルを使うのか」という目的を親子で共有することから始めることで、お子様の納得感を高め、自律的な利用を促し、デジタル活用の可能性を広げることができます。
まずは保護者自身が考え、次にお子様の声にじっくり耳を傾け、そして親子で共通認識としての目的を見つけ、最後にその目的達成のための具体的なルールを一緒に考えましょう。そして、日々の生活の中で、お子様が目的を意識した行動を認め、失敗を学びの機会とする声かけを続けることで、より良いデジタルとの関わり方を育んでいくことができます。
デジタルは、適切に使えばお子様の成長の強力な味方になります。目的を共有する対話を通じて、お子様との関係を深めながら、わが家らしいデジタルルールを見つけていきましょう。