デジタルルール、決めて終わりになっていませんか？思春期の子と「忘れずに意識する」家族の習慣
思春期のお子様とデジタル利用のルールについて話し合い、時間をかけて家族で合意に至ったという家庭も多いことでしょう。しかし、ルールを決めたものの、時間の経過とともに忘れられてしまったり、守られないことが増えたりして、「せっかく決めたのに、どうすればよいのだろう」と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
ルール作りは、よりよいデジタルとの向き合い方を模索する旅のスタートラインです。大切なのは、決めたルールを一時的なものとせず、家族みんなが日常の中で無理なく意識し続け、必要に応じて見直していく「習慣」にしていくことではないでしょうか。
この記事では、思春期のお子様と決めたデジタルルールが形骸化せず、家族の習慣として定着していくための具体的な方法や、日常でルールを意識し続けるための工夫についてご紹介します。
なぜ決めたルールが「終わり」になりやすいのか
まず、なぜ一度決めたデジタルルールが、時間の経過と共に忘れられたり、形骸化したりしやすいのか、その背景を考えてみましょう。
思春期のお子様にとって、スマートフォンやゲーム機は友人との大切な繋がりであり、自己表現や情報収集のツールでもあります。変化の多い時期であり、デジタルとの関わり方も日々変化していきます。そうした中で、一度決めたルールを常に意識し、守り続けることは、大人である私たちにとっても決して簡単なことではありません。
また、親御さんとしても、忙しい日常の中で常にルールを意識させたり、守られているかを確認したりすること自体が負担に感じられることもあります。つい「もういいか」と見て見ぬふりをしてしまったり、注意する際に感情的になってしまい、子どもとの関係が悪化することを避けたいという思いから、厳しく対応しきれないこともあるでしょう。
ルールが紙に書いて貼ってあるだけ、口頭で確認しただけという状態では、お互いに意識から遠ざかりやすいのは自然なことかもしれません。大切なのは、この「忘れてしまう」「意識しにくくなる」という状況を、家族みんなでどのように乗り越えていくか、という視点を持つことです。
家族でデジタルルールを「忘れずに意識する」ための具体的な工夫
決めたデジタルルールを家族みんなの「習慣」にしていくためには、いくつかの具体的な工夫が考えられます。無理なく続けられる範囲で、ご家庭に合った方法を試してみてください。
工夫1: ルールを「見える化」し、日常に溶け込ませる
デジタルルールを忘れないための最初のステップは、「いつでも目に入る」ようにすることです。ただ紙に書いて貼るだけでなく、家族みんなが見やすく、かつポジティブに捉えられるような工夫を凝らしてみましょう。
- 家族みんなで作る「わが家のデジタル憲章」: 家族で一緒にルールを清書したり、イラストを描いたりして、リビングなど家族が集まる場所に貼ることで、「自分たちで決めた大切なもの」という意識が高まります。
- 家族カレンダーや共有アプリの活用: 特定のルール（例: 「〇時以降はデジタルオフ」）を家族で共有しているカレンダーに書き込んだり、リマインダー設定を活用したりすることで、うっかり忘れを防ぐことができます。
- デバイスの壁紙やメモ機能: スマートフォンやPCの壁紙に簡易的なルール（例: 「寝る1時間前には充電」）を表示させたり、メモアプリにルールリストを保存していつでも確認できるようにしたりするのも有効です。
工夫2: 定期的な「確認」と「声かけ」を習慣にする
ルールを決めたら終わりではなく、定期的に家族でルールについて話す機会を持つことが大切です。
- 週に一度の「デジタルタイム」: 週末の夕食時など、家族がリラックスできる時間に5分でもよいので、「最近のデジタルの使い方についてどう思う？」「ルールで困っていることはない？」など、軽いトーンで話し合う時間を持つ。
- ポジティブな声かけ: ルールが守れた時には、「〇〇、時間通りにゲームを終えられて偉かったね」「今日の夜更かししなかったから、朝スッキリ起きられたね！」など、具体的な行動を褒める声かけを意識する。これは、ルールを守ることがお子様自身のメリットにつながることを実感させる機会にもなります。
- 親自身もルールの実践者になる: 親が「スマホはリビングに置く」「寝る前はデジタルを見ない」など、家族で決めたルールや習慣を率先して守る姿を見せることは、お子様にとって何よりも説得力のあるメッセージになります。
工夫3: 「無理なく続ける」ための柔軟な視点を持つ
決めたルールを完璧に守らせようとすると、親も子も息苦しくなってしまいます。「無理なく続ける」ためには、柔軟な視点が不可欠です。
- 完璧を目指さない: 時にはルールから外れてしまうこともあるかもしれません。そんな時は、「絶対にダメ」と厳しく叱るのではなく、「どうしたら次から大丈夫かな？」と、一緒に解決策を考える姿勢を持つことが大切です。
- 状況に応じた「例外」を認める: 例えば、「テスト期間中は時間を短くする」「週末だけは少しだけ長くてもよい」など、状況によって柔軟に対応できる部分があることを事前に話し合っておくことも、ルールを現実的なものとして捉える上で有効です。
- ルールの「見直し」を前提とする: お子様の成長やデジタル環境の変化に合わせて、ルールも見直していく必要があります。「このルールは今の私たち家族に合っているかな？」「何か変更したいことはある？」など、定期的に話し合い、必要であればルールを更新していくことを前提としておきましょう。これは、お子様がルール作りに主体的に関わり続ける機会にもなります。
他の家庭の事例から学ぶヒント
- ある家庭では、リビングのホワイトボードに家族のデジタルルールを書き出し、週に一度、家族みんなでボードを見ながら簡単に振り返る時間を作っています。
- 別の家庭では、子ども部屋ではなくリビングでゲームをする、夜〇時以降は親がすべてのデバイスを管理するというルールを物理的に実行することで、子ども自身もルールを意識しやすくなったと言います。
- 「今日のデジタル利用で新しく知ったことはある？」など、デジタル利用の内容についても日常会話の中で尋ねることで、量だけでなく質にも目を向けさせる工夫をしている家庭もあります。
これらの事例のように、家庭によって様々な工夫があります。他を真似る必要はありませんが、「わが家ならどうできるだろう？」と考えるヒントにしてみてください。
最後に
思春期のお子様とのデジタルルール作りは、一度決めたら終わりではありません。家族みんなでルールを「忘れずに意識する」、そして「無理なく続ける」ための工夫を日常に取り入れていくことが、ルールを形骸化させず、よりよい家族のデジタル習慣を育む鍵となります。
完璧を目指す必要はありません。時にはうまくいかないこともあるでしょう。しかし、大切なのは、デジタルとの向き合い方について家族で話し合うことを諦めず、お互いを尊重しながら、家族みんなが納得できる形を模索し続けることです。
ルールを通して、家族のコミュニケーションが深まり、お子様がデジタルと賢く付き合っていくための自律性が育まれることを願っております。焦らず、ご家庭のペースで、できることから始めてみてください。