決めたはずのデジタルルール、形骸化していませんか?思春期の子と見直す「今のわが家」に合うルールへの立て直し方
はじめに
思春期のお子様との間でデジタル利用に関するルールをせっかく決めたのに、時間が経つにつれてなんだか形骸化してきたように感じる、ということはございませんか。最初は親子で納得して決めたはずのルールが、いつの間にか守られなくなり、注意すると子供は反発する。どうしたら良いのか分からない、と悩んでいらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
デジタル環境は日々変化し、お子様の成長と共にその利用目的や時間は変わっていきます。一度決めたルールが永遠に機能するわけではないのは自然なことです。しかし、ルールが形骸化した状態を放置しておくと、お子様のデジタル依存やトラブルのリスクを高めるだけでなく、親子間の信頼関係にも影響を及ぼす可能性がございます。
この記事では、デジタルルールが形骸化していくサインに気づき、お子様との関係性を損なわずに、今の「わが家」に合ったルールへと立て直していくための具体的なステップと、その際のコミュニケーションのポイントについてご紹介いたします。この記事をお読みいただくことで、ルールがうまく機能しなくなった時にどのように対応すれば良いのか、そのヒントを得ていただければ幸いです。
なぜ、デジタルルールは時間と共に形骸化しやすいのか
デジタルルールが形骸化してしまうのには、いくつかの要因が考えられます。これらを理解することは、立て直しの第一歩となります。
- お子様の成長と変化: 思春期のお子様は、心身ともに大きく成長し、行動範囲や人間関係が広がります。デジタルデバイスの利用目的も、単なる遊びから、友達とのコミュニケーション、情報収集、趣味の深化など多様化します。これに伴い、以前決めたルールが現状に合わなくなることがあります。
- デジタル環境の変化: 新しいアプリやサービスが登場したり、利用方法が変化したりすることで、当初想定していなかった問題や利用形態が出てきます。ルールがこれらの変化に対応できていない場合があります。
- ルールの不便さや現実との乖離: 厳しすぎるルールや、お子様の生活リズム、学校の状況などを十分に考慮せずに決めたルールは、守ることが難しく、結果として形骸化しやすくなります。
- コミュニケーション不足: ルールを決めた後、親子でルールの状況について話し合う機会がないと、お互いの考えや状況の変化に気づきにくくなります。
- 親側の変化: 親自身がルールを意識しなくなったり、日々の忙しさから声かけがおろそかになったりすることもあります。
これらの要因が絡み合い、気づかないうちにルールが形骸化していくのです。
デジタルルール形骸化のサインに気づく
ルールが機能しなくなってきている、というサインにはどのようなものがあるでしょうか。お子様の様子や、ご家庭でのデジタルデバイスの利用状況を観察してみてください。
- ルールが守られない場面が増える: 約束した時間を超過している、決められた場所以外で使用しているなど、以前は守られていたはずのルールが破られる回数が増えている。
- 隠れてデジタルデバイスを使用する: 親の目を避けるようにこっそり使っている、デバイスの画面を隠すような仕草が見られる。
- ルールに関する話題を避ける: デジタル利用について尋ねると、露骨に嫌な顔をしたり、話題を変えようとしたりする。
- 親の注意や声かけへの無反応・反発: ルールを守るように促しても、無視したり、「うるさいな」「今だけだから」と反発したりする。
- デジタル利用による生活への影響: 夜更かしが増えて寝不足気味になる、食事中や家族との会話中にデバイスを離さない、学習時間や他の活動時間が減る、イライラしやすいなど、明らかな生活の乱れが見られる。
これらのサインに気づいた時、感情的に𠮟りつけるのではなく、「あれ?以前と状況が変わってきているな」と冷静に受け止めることが、立て直しのスタートラインとなります。
形骸化したデジタルルールを立て直すステップ
ルールが形骸化しているサインに気づいたら、お子様との関係性を大切にしながら、今のわが家に合ったルールへと立て直していきましょう。以下のステップを参考に進めてみてください。
ステップ1:親自身の状況把握と心の準備
まず、親御さん自身が冷静になることが大切です。「なぜ守れないの!」と責める気持ちは一度置いて、現状を客観的に見てみましょう。
- 何が守られていないのか、具体的にリストアップしてみる。
- なぜ守られていないのか、お子様の立場になって考えてみる(ルールが厳しすぎる?必要性が出てきた?)。
- お子様との対話を通じて、共に解決策を見つけよう、という前向きな姿勢を持つ準備をする。
この準備が、お子様との建設的な対話につながります。
ステップ2:お子様との対話の場を持つ
お子様が落ち着いている時、またはデジタルデバイスから離れているタイミングを見計らって、話しかけてみましょう。
- 「最近、デジタル〇〇(ゲームやSNSなど)楽しそうだね」など、まずは共感や関心を示す言葉から入る。
- いきなり「ルールが守られてない」と切り出すのではなく、「前に決めたルールのことなんだけど、最近どうかな?何か困ってることとか、やりにくいこととかない?」のように、お子様の状況や気持ちを尋ねる問いかけをする。
- お子様が話し始めたら、否定せずに最後まで耳を傾ける。相槌を打ったり、「そうなんだね」「〇〇ってことかな?」と確認したりしながら、共感を示す姿勢を見せましょう。
ステップ3:現状のルールの課題を共に洗い出す
対話を通じて、守られていないルールや、ルールによって生じている不便さなど、課題となっている点を親子で共有します。
- 親からは、「〇〇のルール、以前は守れていたけど、最近少し守るのが難しい時があるのかな?」「〇〇の時、やりにくそうに見えたんだけど、どう感じてる?」など、具体的に、かつ決めつけずに尋ねます。
- お子様から、「このルールはもう無理がある」「〇〇するのに、この時間は短すぎる」といった意見が出たら、その理由を詳しく聞いてみましょう。
- なぜそのルールを決めたのか、当初の目的(健康のため、家族との時間のためなど)を親から伝えることも大切です。お子様も、ルールの意図を再認識することで、協力しやすくなります。
ステップ4:共に新しいルールや修正案を考える
課題が明確になったら、それを解決するための新しいルールや、既存ルールの修正案を親子で一緒に考えます。
- 親が一方的に新しいルールを提示するのではなく、「どうしたら〇〇(課題)を解決できるかな?」「何か良いアイデアある?」と、お子様に主体的に考えてもらうように促します。
- お子様から出たアイデアに対しても、頭ごなしに否定せず、まずは受け止めて「それはどうして?」と深掘りしてみましょう。現実的でないように思えるアイデアでも、その背景にあるお子様のニーズを理解することが重要です。
- お子様の成長や、変化したデジタル利用の目的に合わせて、ルールを柔軟に見直す姿勢を持ちましょう。時間の延長、場所の変更、利用内容の区別など、様々な角度から検討します。
- 完璧を目指すのではなく、「これならお互い無理なく続けられそうだね」と、親子で納得できる落としどころを見つけることが大切です。
ステップ5:見直したルールを共有・確認する
新しいルールが決まったら、それが「わが家」の新しい約束事であることを親子で確認します。
- 決まった内容を紙に書いたり、家族で共有できるカレンダーやアプリに入力したりして、「見える化」することも有効です。いつでも親子で確認できるようにしておくと、意識しやすくなります。
- しばらく運用してみて、また課題が出てきたら見直す機会を持つことも伝えておきましょう。「これは一時的なルールではなく、わが家の状況に合わせて変えていけるものなんだ」という理解は、お子様の安心感につながります。
立て直しを成功させるためのポイント
ルールを立て直す過程で、特に意識しておきたいポイントがいくつかあります。
- お子様の成長を認める: 思春期のお子様は、親が思う以上に成長しています。デジタル利用についても、以前より責任を持って利用できる部分が増えているかもしれません。その成長を認め、「自分で考えて利用できるようになってほしい」という願いを伝えることで、お子様の自律性を促すことができます。
- 完璧を求めすぎない: 一度決めたルールがすぐに完璧に守られるとは限りません。時にはルールから外れることもあるでしょう。その度に厳しく𠮟責するのではなく、まずは「どうしたの?」「何か理由があるのかな?」と穏やかに尋ねる姿勢が大切です。
- 小さな変化を褒める: ルールを守ろうと努力している姿や、少しでも改善が見られた時は、「ルールを守ってくれてありがとう」「〇〇な行動、助かるよ」など、具体的に褒めたり感謝を伝えたりしましょう。肯定的なフィードバックは、お子様のモチベーション維持につながります。
- 親もルールを見直す姿勢を持つ: 親自身のデジタル習慣が、子供のデジタル利用に影響を与えている可能性もございます。子供にだけルールを課すのではなく、親自身も「わが家にとって快適なデジタル環境とは?」という視点で自身の利用方法を見直すことも重要です。
- 対話の機会を継続的に持つ: ルールを立て直して終わりではなく、定期的に「今のルールで大丈夫かな?」「何か困ってない?」と尋ねる機会を持ちましょう。これにより、問題が大きくなる前に軌道修正しやすくなります。
まとめ
思春期のお子様とのデジタルルールは、一度決めたら終わりではなく、お子様の成長や環境の変化に合わせて見直していくことが自然なプロセスです。せっかく決めたルールが形骸化してきたように感じても、それは失敗ではございません。そのサインに気づき、お子様との対話を通じて共に解決策を探る機会だと捉え直してみましょう。
この記事でご紹介したステップを参考に、お子様の気持ちに寄り添いながら、なぜルールが機能しなくなっているのかを理解し、今の「わが家」に最も適した形にルールを立て直してみてください。親子で協力してデジタルルールを見直すプロセスは、お子様の自律性を育み、親子間の信頼関係を深める貴重な機会となります。無理なく、そして諦めずに、わが家のデジタルルールを心地よい状態に保っていきましょう。