それぞれの使い方に合わせて。思春期の子と作るデバイス別デジタルルール
はじめに:思春期の子どもと多様なデバイスの付き合い方
お子様が思春期を迎えられると、スマートフォン、ゲーム機、パソコン、タブレットなど、様々な種類のデジタルデバイスを使う機会が増えてくることと思います。それぞれのデバイスは、コミュニケーション、娯楽、学習、情報収集といった異なる目的で使われることが多く、それに伴う利用時間や内容は多岐にわたります。
親御様としては、お子様がそれぞれのデバイスとどのように向き合っているのか、使いすぎではないか、どのような情報をやり取りしているのかなど、漠然とした不安を感じられることもあるかもしれません。一方で、頭ごなしに制限したり、「これはダメ」と一方的に決めたりすると、お子様の反発を招き、せっかく築いてきた親子関係にひびが入ってしまうのではないかという心配もあるでしょう。
本記事では、思春期のお子様が使うデジタルデバイスの特性を踏まえ、それぞれの使い方に合わせた無理のないデジタルルールを、お子様との対話を通じて一緒に作っていくための具体的なステップとヒントをご紹介します。デバイスごとにルールを考えることで、より具体的で納得感のある、そして持続可能な家族のデジタル習慣を築くための一助となれば幸いです。
なぜデバイス別のルールが必要なのか
スマートフォン、ゲーム機、パソコンは、同じ「デジタルデバイス」というカテゴリーに属しますが、その主な用途や機能、利用シーンは大きく異なります。
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スマートフォン:
- 主な用途:コミュニケーション(SNS、メッセージアプリ)、情報収集、短時間の娯楽(動画視聴、ライトなゲーム)、オンライン決済など
- 特徴:常に携帯可能、通知が多い、人との繋がりがメインになることが多い
- 懸念点:SNS疲れ、情報過多、就寝前の利用による睡眠不足、歩きスマホなどの危険性
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ゲーム機:
- 主な用途:ゲーム(オンライン・オフライン)、友人とのオンラインプレイ、動画視聴など
- 特徴:据え置き型と携帯型がある、特定のゲームタイトルに没頭しやすい
- 懸念点:長時間のプレイによる生活習慣の乱れ、課金トラブル、オンラインでの人間関係トラブル
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パソコン・タブレット:
- 主な用途:学習、調べもの、動画編集やプログラミングなどの創作活動、オンライン授業、ゲームなど
- 特徴:大画面での作業に適している、キーボード入力で長文作成や複雑な作業が可能
- 懸念点:長時間の画面凝視による目の疲れ、不適切な情報への接触、姿勢の悪化
このように、デバイスごとに使い方が異なるため、「すべてのデジタルデバイスは1日○時間まで」といった一律のルールだけでは、お子様の実際の利用状況にそぐわない場合があります。デバイスごとの特性を理解し、それぞれの使い方に合わせたルールを設けることで、より柔軟で現実的な、そしてお子様にとっても納得しやすいルール作りが可能になります。
デバイス別ルールの作り方:対話と合意のステップ
デバイス別のルール作りは、まず親御様がお子様の利用状況を理解し、そしてお子様自身の考えを聞くことから始まります。
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現状の把握と対話の場を持つ:
- まず、お子様がそれぞれのデバイスをどのように、どのくらいの時間使っているのか、おおまかに把握しましょう。
- お子様と向き合って話せる時間を作り、「最近、スマホやゲーム、パソコンでどんなことをしてるの?」「学校の友達とどんなアプリを使ってるの?」など、興味を持って尋ねることから始めます。一方的に問い詰めるのではなく、日常の会話の中で自然に触れるのが良いでしょう。
- 親御様がどのような点に不安を感じているのかを、感情的にならず、「〜が心配だな」「〜は体に良くない影響があるみたいだよ」のように、理由を添えて具体的に伝えます。
- この段階では、すぐにルールを決めるのではなく、「一緒に考えていきたいな」という前向きな姿勢を示すことが大切です。
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デバイスごとの「使う目的」と「理想の姿」を話し合う:
- それぞれのデバイスについて、「それは何のために使っているの?」「それを使うことでどんな良いことがある?」といったお子様の「使う目的」を聞いてみましょう。「友達と繋がるため」「息抜きのため」「調べものをするため」など、お子様なりの理由があるはずです。
- 次に、親御様が考える「理想のデジタル利用の姿」を伝えます。「スマホで友達と楽しくやり取りするのは良いけど、夜遅くまで見てると体が疲れちゃうよね」「ゲームも楽しいけど、勉強や他のやりたいことの時間がなくなっちゃうのはもったいないかもね」のように、お子様の健康や成長を願う気持ちを伝えます。
- お子様自身の「理想の姿」も聞いてみます。「本当はもっと早く寝たい」「ゲームで強くなりたいけど、目も疲れる」など、お子様自身も課題を感じている場合があります。
- デバイスごとに、お互いの「使う目的」や「理想の姿」を共有することで、ルールの必要性について共通認識を持つことができます。
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具体的なルール項目を検討し、合意する:
- 話し合った内容を踏まえ、デバイスごとに具体的なルール項目を検討します。
- スマホのルール例:
- 就寝時間の○時間前からは使用しない。
- 食事中はテーブルに持ち込まない。
- 個人的なメッセージのやり取りは○時までとする。
- 危険なサイトや知らない人とのやり取りには注意する。
- ゲーム機のルール例:
- 1日のプレイ時間は合計○時間までとする。(平日と休日で分けても良い)
- 課金をする際は必ず親に相談する。
- オンラインで知らない人と過度に個人的なやり取りをしない。
- ゲームをする場所はリビングなど、親の目が届く場所にする。
- パソコン・タブレットのルール例:
- 学習目的以外での使用時間は○時間までとする。
- 有害なサイトにはアクセスしない。
- 使用する場所はリビングなど、共有スペースとする。
- これらの例を参考に、お子様と一緒に「これならできる」「これは難しいかも」と話し合いながら、現実的なルール内容を決めていきます。一方的な押し付けではなく、「どうしたら守れるかな?」と一緒に考える姿勢が重要です。
- ルールは、可能な範囲で具体的な内容にすることが望ましいです(例:「夜遅くまでスマホを使わない」ではなく、「夜10時以降はスマホをリビングに置く」など)。
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ルールを「見える化」し、定期的に見直す:
- 決まったルールは、家族みんなが見える場所に紙に書いたり、共有のカレンダーアプリに入力したりして、「見える化」します。これにより、お互いがルールを意識しやすくなります。
- 一度決めたルールも、お子様の成長やデジタル環境の変化に合わせて見直しが必要です。「このルールは守れているか」「今のままで不都合はないか」などを定期的に(数ヶ月に一度など)話し合う機会を持ちましょう。見直しの機会を設けることで、お子様も「自分たちのルールだ」という意識を持ちやすくなります。
他の家庭のデバイス別ルール事例
他の家庭がどのようなルールを設けているのかを知ることは、自分たちの家庭に合ったルールを考える上で参考になります。以下にいくつかの事例をご紹介します。
- 事例1(スマホ特化): 「平日は夜9時以降は親に預ける。休日は夜10時まで」「食事中は機内モード」「家族の用事にはすぐに反応する」
- 事例2(ゲーム機特化): 「平日1時間、休日2時間まで」「オンラインプレイは友達とだけ」「課金はゲーム内ポイントではなく、必ず親がお金を確認してから購入する」
- 事例3(デバイス共通+個別): 「すべてのデバイス共通で、食事中・寝室での利用は禁止」「スマホは友達との連絡と調べものに限定(ゲームアプリは入れない)」「ゲーム機はリビングのみ」「パソコンは学習・創作・調べものに使い、ゲームはしない」
- 事例4(時間ではなく目的): 「スマホでSNSを見すぎないように、投稿は○分まで」「ゲームで疲れたら休憩する」「パソコンでの学習は○時までに終わらせる」のように、時間よりも行動や目的に焦点を当てたルール。
これらの事例はあくまで一例です。ご家庭の状況やお子様の性格、デバイスの利用状況に合わせて、柔軟に取り入れてみてください。
まとめ:デバイス別ルールで、より良いデジタルとの付き合いを
思春期のお子様とのデジタルルール作りは、決して簡単な道のりではありません。しかし、デバイスごとの特性に合わせて具体的なルールを考えることで、お子様自身も「どのように使えば良いのか」が明確になり、親御様も漠然とした不安ではなく、具体的な点に焦点を当てて見守ることができます。
対話を通じて、お子様の「使う目的」を理解し、親御様の「願う姿」を共有しながら、一つずつ丁寧にルールを決めていくプロセスは、お子様のデジタルリテラシーを育み、自律的な利用を促す大切な機会となります。そして何より、このプロセスを通じて、お子様との信頼関係をさらに深めることができるはずです。
それぞれのデバイスを、お子様の成長や家族のコミュニケーションを豊かにする味方として迎え入れられるよう、本日ご紹介したステップや事例が、ご家庭でのルール作りの一助となれば幸いです。