わが家のデジタルルール作り

思春期の子どもが夢中なデジタル世界。親が「知らない」を「知る」ことから始めるデジタルルール

Tags: デジタルルール, 思春期, 親子関係, オンライン理解, コミュニケーション

思春期を迎えたお子様のデジタル利用について、漠然とした不安を感じていらっしゃる親御様は少なくないでしょう。スマートフォンやゲーム機を通して、お子様がどのような世界に触れているのか、どのような情報にアクセスしているのか、すべてを把握することは難しく感じられるかもしれません。

「うちの子は、ゲームやSNSで一日中何をしているんだろう…」 「親の知らないところでトラブルに巻き込まれていないかしら…」 「どんなルールを作ればいいのか分からないし、話そうとすると反発されそう…」

このようなお悩みは、多くの親御様が抱えるものです。特に思春期のお子様は、親から自立しようとする時期であり、自分の世界を親に見られたくないと感じることもあります。しかし、親がその「知らない」状態のままで一方的にルールを押し付けようとすると、お子様は反発し、親子間の溝が深まってしまう可能性があります。

この記事では、親がまずお子様のデジタル世界に「興味を持ち、知る」ことから始めるデジタルルール作りのステップをご紹介します。お子様の世界を理解しようとする姿勢が、信頼関係を築き、無理なく続けられる家族のデジタルルールを作るための大切な一歩となるでしょう。

なぜ親が「知る」必要があるのでしょうか?

お子様のデジタル利用について親が「知る」ことは、単に監視するためではありません。それには、いくつかの重要な理由があります。

親が「知らない」という状態から一歩踏み出し、「知る」努力をすることは、お子様との信頼関係を深め、共にデジタルと賢く付き合っていくための大切なプロセスなのです。

お子様のデジタル世界を「知る」ための具体的なステップ

では、具体的にどのようにしてお子様のデジタル世界を「知る」ことができるのでしょうか?思春期のお子様に対して、無理なく実行できるステップをご紹介します。

  1. お子様に興味を持つ姿勢を示す: 「最近どんなゲームしてるの?」「その動画面白い?」「学校で流行ってるアプリって何?」など、何気ない会話の中で、お子様のデジタルでの活動に関心を示すことから始めましょう。問い詰めるような口調ではなく、純粋な興味として尋ねることが大切です。
  2. お子様が見ているもの、遊んでいるものを「一緒に」体験してみる: もし可能であれば、お子様が夢中になっているゲームを少し一緒にプレイしてみたり、見ている動画を一緒に見てみたりするのも良いでしょう。「どういうところが面白いの?」「これはどんなルールなの?」などと尋ねながら、お子様の世界に触れてみてください。お子様が恥ずかしがったり嫌がったりする場合は、無理強いはせず、別の機会を待ちましょう。
  3. 話題のサービスやアプリについて親自身が調べてみる: お子様が使っている、あるいは興味を持っているであろうSNSやゲーム、動画サイトなどについて、親御様自身が少し調べてみることも有効です。どのような機能があるのか、どのような危険性が指摘されているのか、どういった層に人気があるのかなどを把握することで、お子様との会話の糸口が見つかったり、リスクに対する具体的な知識が得られたりします。インターネット検索や、信頼できる情報源(公的機関や教育機関のサイトなど)を活用してみましょう。
  4. お子様のオンラインでの人間関係に関心を持つ: お子様にとって、デジタル空間は友達との大切なコミュニケーションの場です。どのような友達と、どのようにコミュニケーションを取っているのか(メッセージアプリでのやり取り、オンラインゲームでの協力プレイなど)に関心を持ち、「〇〇君とこのゲームで遊んでるんだね、楽しそうだね」などと肯定的な声かけをすることで、お子様は「親は自分の友達関係も理解しようとしてくれている」と感じ、安心してオンラインでの出来事を話してくれるようになるかもしれません。
  5. 「知る」目的を明確に伝える: これらのステップは、お子様を監視するためではなく、お子様の世界を理解し、共に安心・安全なデジタルライフを送るための協力関係を築くことが目的であることを、言葉や態度で伝えましょう。「あなたがどんなことに興味があるのか知りたい」「一緒にデジタルをもっと楽しく安全に使えるように考えたい」というメッセージは、お子様の心に届きやすいはずです。

これらのステップを通して、親御様はお子様のデジタル利用に対する「知らない」状態から、「具体的に知っていること」「まだ分からないこと」「心配なこと」を整理できるようになります。

「知る」ことから「ルール作り」へつなげる

お子様のデジタル世界への理解が深まったら、いよいよデジタルルール作りに具体的に取り組む段階です。親が一方的に決めるのではなく、「知る」ことで得られた共通認識を土台に、お子様と共に話し合ってルールを作ることが成功の鍵です。

  1. 理解したことを共有し、共感を示す: お子様との会話の中で、「〇〇っていうゲーム、△△なところが面白いんだね、よく分かったよ」「友達とメッセージでやり取りするのが、今の連絡手段なんだね」など、親御様が理解したこと、共感したことを言葉にしてみましょう。お子様は「分かってくれた」と感じ、より心を開きやすくなります。
  2. 具体的な話題から「なぜ心配なのか」を伝える: 漠然と「ゲームばかりしないで」と言うのではなく、理解した内容に触れながら具体的な心配事を伝えましょう。「あのゲーム、友達と夜遅くまでやってると聞いたけど、次の日の授業に影響しないか心配だな」「そのSNS、知らない人からメッセージが来ることもあるみたいだけど、個人情報を伝えるのは危険だよ」など、理由を明確に伝えます。
  3. 「どうすれば両方が安心できるか」を一緒に考える: 親の心配事を伝えたら、「じゃあ、どうすればあなたがゲームを楽しめて、私も安心できるかな?」「安全にSNSを使うには、どんなことに気をつけたらいいと思う?」など、解決策をお子様と一緒に考えます。親が一方的に「〇〇はダメ」と決めるのではなく、「どうしたらいいか」を問うことで、お子様も自分事として捉え、主体的に考えるようになります。
  4. 「家族として大切にしたいこと」と結びつける: ゲーム時間であれば、「家族みんなでご飯を食べる時間は大切にしたいね」「睡眠時間は十分に確保して、元気に学校に行こうね」など、家族の価値観や健康、生活習慣といった観点から、なぜそのルールが必要なのかを話し合います。
  5. 小さなことからルールを決めていく: 一度に完璧なルールを作ろうとせず、まずは親子で合意できた小さなことからルールとして明確にしてみましょう。「食事中はスマホをリビングに置く」「寝る1時間前からはブルーライトの強い画面は見ない」など、具体的な行動に関するルールは取り組みやすいかもしれません。
  6. ルールは柔軟に見直すことを前提とする: お子様の成長やデジタル環境の変化に合わせて、ルールは見直していく必要があります。「このルールでしばらくやってみて、うまくいかなかったらまた話し合おうね」と伝え、親子で共にルールを育てていく姿勢を持つことが大切です。

親が「知らない」という壁を取り払い、お子様のデジタル世界に関心を持ち、理解しようと努めること。このプロセスは、デジタルルール作りのためだけでなく、思春期という大切な時期のお子様との向き合い方そのものに、きっと良い変化をもたらすはずです。お子様の成長を信頼し、共に学びながら、わが家にとって無理なく続けられるデジタルルールを見つけていきましょう。