ゲームやSNSだけじゃない。思春期の子と「なりたい自分」を応援するデジタルルール
デジタル利用を「将来への投資」に変える視点
お子様がスマートフォンやゲーム機、PCに向かう時間が増えるにつれて、「このままで大丈夫だろうか」「将来に悪影響はないか」といった漠然とした不安を抱える親御様は少なくありません。特に思春期は、心身ともに大きく成長し、自立心が芽生える大切な時期です。この時期の子どものデジタル利用を、単なる娯楽や時間の浪費と捉えるのではなく、お子様自身の「なりたい自分」や「将来の目標」を応援するためのツールとして捉え直すことはできないでしょうか。
ここでは、デジタル利用を制限するだけでなく、お子様の将来の可能性を広げる視点から、思春期のお子様と無理なく続けられるデジタルルールを作るためのステップと具体的なアプローチをご紹介します。
なぜ「将来の目標」からデジタルルールを考えるのか
思春期のお子様にとって、デジタル空間は単なる遊び場ではなく、世界と繋がり、多様な情報に触れ、自己表現を試みる場でもあります。この時期は同時に、将来について考え始めたり、自分の興味や関心を探求したりする大切な時期でもあります。
デジタルは、正しく向き合えば、情報収集、学習、スキル習得、創造活動、そして人との繋がりを深める上で非常に強力なツールとなり得ます。お子様自身の「やってみたい」「こうなりたい」という意欲とデジタル利用を結びつけることで、デジタルを「目的」ではなく「手段」として位置づけることができます。
この視点からルールを作ることは、単に利用時間を制限されることへの反発を減らし、「何のためにデジタルを使うのか」という目的意識をお子様の中に育むことにつながります。ルールが「やらされるもの」ではなく、「自分の成長を助けるもの」という認識に変われば、お子様はより主体的に、そして賢くデジタルと付き合っていくことができるようになるでしょう。
ステップ1:お子様の「なりたい自分」や興味・関心に耳を傾ける
まずは、お子様が将来どんなことに興味があるのか、どんな自分になりたいと思っているのか、じっくりと耳を傾けることから始めましょう。完璧な目標や明確な夢がなくても構いません。「最近どんなことに興味がある?」「学校でどんな科目が楽しい?」「YouTubeでどんな動画をよく見ている?」「将来どんな仕事をしてみたいかな?」といった、気負わない質問から対話を始めてみてください。
この時大切なのは、親御様が一方的に「〇〇になりなさい」「〜なことは無駄だ」と決めつけたり、否定したりしないことです。お子様の言葉の端々や、普段のデジタル利用の様子から、隠れた興味や才能のヒントが見つかることもあります。親御様ご自身の若い頃の話や、身近な人の多様な働き方などを話すことも、お子様の視野を広げるきっかけになります。
ステップ2:目標達成に役立つデジタル活用の具体例を親子で探す
お子様の興味や関心が見えてきたら、それがデジタルの力でどのように深められるか、親子で具体例を探してみましょう。
- 例1:絵を描くのが好き
- デジタルツール(イラストソフト、タブレット)を使った描き方を学ぶ(チュートリアル動画、オンライン講座)。
- 国内外のイラストレーターの作品を見て表現方法を学ぶ(SNS、作品投稿サイト)。
- 自分の作品を発表する(SNS、ポートフォリオサイト)。
- 例2:ゲームに夢中
- ゲーム制作に興味を持つ(プログラミング学習サイト、ゲーム開発ツール)。
- ゲーム実況を通じてプレゼンテーション能力や編集スキルを磨く。
- eスポーツを通じて戦略的思考やチーム連携を学ぶ。
- 例3:特定の国や文化に興味がある
- その国の言語学習アプリやオンラインレッスンを利用する。
- 現地のニュースや文化に関する情報(動画、記事)を多角的に調べる。
- 国際交流ができるオンラインコミュニティに参加する(安全面に配慮しつつ)。
- 例4:学校の勉強で苦手な分野がある
- 分かりやすい解説動画や学習アプリを利用して復習する。
- オンライン質問サイトや学習コミュニティで疑問点を解消する。
このように、デジタルの使い方はゲームやSNSだけにとどまりません。お子様の「好き」や「興味」を深掘りし、それを実現するための具体的な「手段」としてデジタルを活用する方法を一緒に考えることが重要です。
ステップ3:「目標応援」のためのデジタルルールを作る
お子様の目標や興味に基づいたデジタル活用のイメージが湧いてきたら、それを踏まえたルール作りに入ります。単なる時間制限だけでなく、以下のような視点を取り入れることで、より建設的なルールになります。
- 「何に使うか」を明確にする: 「〇時まで」だけでなく、「〇時から〇時までは、将来〇〇になるために、〜(例:プログラミングのチュートリアルを見る、興味のある分野について調べる)をする時間にする」のように、目的とセットで時間を設定する。
- 具体的な行動目標と結びつける: 「毎日ゲームをする」ではなく、「週に〇日、〇分、英語学習アプリで勉強する」「月に1冊、興味のある分野の電子書籍を読む」など、具体的な行動をルールに盛り込む。
- オンラインスキル習得を組み込む: 情報の真偽を見分ける、プライバシーを守る、著作権に配慮するといったデジタルリテラシーに関することも、目標達成に必要なスキルとして話し合い、ルールに含めることができます。例えば、「調べ物をする時は、信頼できる情報源か確認する」といった項目です。
- 親子で進捗を確認する場を持つ: 一方的な「チェック」ではなく、「〇〇の勉強、どこまで進んだ?」「〜について調べてみてどうだった?」など、お子様の取り組みを応援する声かけをしたり、発見や学びを共有したりする時間を持つことで、ルールを守るモチベーションにつながります。
ステップ4:柔軟な見直しと継続的な対話を大切に
思春期のお子様の興味や目標は変化していく可能性があります。一度決めたルールも、状況に合わせて柔軟に見直していく姿勢が大切です。「このルール、今のあなたに合っている?」「もっとこうしたら、やりたいことに繋がりそうかな?」など、定期的にお子様と話し合い、必要に応じてルールをアップデートしていきましょう。
ルール作りのプロセスそのものが、お子様が自分で考え、目標を設定し、計画を立てる練習になります。デジタルを「制限」から「応援」のツールへと捉え直し、お子様の「なりたい自分」を親子で応援していくことで、デジタルとのより良い付き合い方を見つけることができるはずです。
まとめ
思春期のお子様とのデジタルルール作りは、対立を避けて進めることが重要です。デジタルを一方的に制限するのではなく、お子様自身の「なりたい自分」や将来の目標を応援するための「手段」として位置づけることで、お子様の納得と主体的な取り組みを促すことができます。
お子様の興味・関心に耳を傾け、目標達成に役立つ具体的なデジタル活用法を一緒に探し、それを踏まえたルールを対話を通じて作り上げていくこと。そして、ルールを固定せず、お子様の成長に合わせて柔軟に見直していくこと。
このプロセスを通じて、お子様はデジタルを賢く使いこなす力を身につけ、将来への可能性を広げていくことでしょう。親御様にとって、これはお子様の成長を間近で感じ、共に新しい学びを深める貴重な機会となるはずです。ぜひ、お子様との対話を楽しみながら、前向きなデジタルルール作りを進めてください。