寝る前・食事中...思春期の子と決める「デジタルを使わない時間」のルール。家族の時間を大切に。
思春期のお子様のデジタル利用について、漠然とした不安をお持ちの保護者様も多いのではないでしょうか。特に、寝る前や食事中までスマートフォンやタブレットが手放せない様子を見ると、家族の会話が減ってしまったり、睡眠に影響が出たりするのではないかと心配になることもあるかと思います。
この記事では、思春期のお子様との関係を損なうことなく、「デジタルを使わない時間」のルールを家族で無理なく決めるためのステップと具体的な方法をご紹介します。家族にとって心地よい時間を取り戻し、より豊かなコミュニケーションを育むためのヒントとして、ぜひご活用ください。
なぜ「デジタルを使わない時間」が大切なのか
まず、なぜあえて「デジタルを使わない時間」を意識的に作ることが大切なのか、その理由を考えてみましょう。これはお子様にルールを受け入れてもらうためにも、親自身がその価値を理解することが重要です。
- 家族のコミュニケーション促進: 食事中やリビングでの時間など、デジタル機器から離れることで、自然と顔を見て話す機会が増えます。思春期は親子の会話が減りがちですが、ちょっとした瞬間の会話の積み重ねが、関係性の維持・構築につながります。
- 心身の健康維持: 寝る直前まで画面を見ていると、ブルーライトの影響などで睡眠の質が低下する可能性があります。また、常に情報に触れている状態は、脳を休める時間を奪い、ストレスにつながることも考えられます。「使わない時間」は心身のリフレッシュに繋がります。
- 集中力の向上: 特定の時間帯にデジタルから離れることで、目の前の活動(食事、勉強、休息など)に集中できるようになります。これは、将来的な自律性や自己管理能力を育む上でも役立ちます。
- 「今、ここ」を大切にする: デジタル機器を通じて外部と常につながっている状態から離れることで、目の前にいる家族や、その場の環境、自分の内面に意識を向けることができます。これは、豊かな感性や穏やかな心持ちを育むことに繋がります。
思春期の子と決める「デジタルを使わない時間」ルール作りのステップ
それでは、実際にお子様と「デジタルを使わない時間」に関するルールを決めるための具体的なステップを見ていきましょう。思春期のお子様との話し合いでは、一方的に押し付けるのではなく、お子様の意見を尊重し、一緒に作り上げていく姿勢が不可欠です。
ステップ1:まずは現状を「一緒に」振り返る
ルール作りを始める前に、まずは家族全員で現在のデジタル利用状況を客観的に振り返る時間を持ってみましょう。「あなたは使いすぎだ」と指摘する形ではなく、「わが家は今、どんな時にどれくらいデジタルを使っているかな?」と、共に考える姿勢が大切です。
- 食事中に誰かがスマホを見ているか
- 寝る何分前までデジタル機器を使っているか
- 家族でリビングにいても、それぞれが画面を見ている時間があるか
など、具体的なシーンを思い出し、話し合ってみてください。
ステップ2:なぜ「デジタルを使わない時間」が必要か、親子で共有する
「スマホを取り上げたいだけでしょ」と思われないためにも、なぜこの時間が必要なのか、その目的とメリットを親子で共有することが重要です。親の不安だけを伝えるのではなく、お子様にとってのメリット(睡眠の質向上、集中力アップ、心身のリフレッシュなど)も具体的に伝えましょう。
「寝る前にスマホを見ると、脳が興奮して眠りにつきにくくなることがあるんだって。〇〇が朝スッキリ起きられるように、寝る○分前からは使わない時間を作れないか考えてみたいんだけど、どうかな?」といったように、理由と提案をセットで伝えるのが効果的です。
ステップ3:どこで/いつ「使わない時間」を作るか、具体的に話し合う
漠然と「デジタルを使わない時間」と言っても、イメージがつきにくいものです。家族のライフスタイルに合わせて、具体的にどの時間帯や場所でデジタル機器から離れるかを話し合って決めます。いくつかの選択肢を提示し、お子様が納得できるものを選んでもらうように促しましょう。
- 食事中の時間: 朝食・昼食・夕食の間は、テーブルにデジタル機器を持ち込まない。
- 寝る前の時間: 寝る時間の○分前からは、寝室でデジタル機器を使用しない。
- リビングでの特定の時間: 例:夕食後○時から○時までは、家族で同じ空間を過ごす時間としてデジタル機器の使用を控える。
- 特定の曜日や時間帯: 例:毎週日曜日の午前中は家族で一緒に過ごす時間とし、デジタル機器は使わない。
お子様の生活リズムや意見を丁寧に聞きながら、「これならできそうかな?」と思えるポイントを見つけていくことが、継続の鍵となります。
ステップ4:具体的なルール内容を決定し、合意する
話し合いを通じて決まった「デジタルを使わない時間」について、具体的なルールとしてまとめます。箇条書きにするなど、分かりやすい形にすると良いでしょう。
- 例1:「平日の夕食(○時~○時頃)の間は、テーブルにスマホやタブレットを持ち込まない」
- 例2:「寝る時間の30分前(○時以降)は、寝室でのスマホ・ゲーム機・PCの使用はしない」
- 例3:「週末の午前中(土・日 ○時~○時)は、家族共通の時間として、各自の部屋やリビングでデジタル機器のみを使用するのではなく、家族と話したり、一緒に何かをしたりする時間にする」
この際、「〜してはいけない」という禁止表現だけでなく、「〜する時間にする」といった肯定的な表現も交えると、前向きに取り組む姿勢を引き出しやすくなります。
ステップ5:例外や守れなかった場合の対応も話し合っておく
ルールは杓子定規にする必要はありません。例えば、家族や友人からの緊急の連絡、オンラインでの宿題や調べものなど、例外的に使用が必要な場面もあるかもしれません。そうした例外規定についても事前に話し合っておくと、後々のトラブルを防げます。
また、せっかく決めたルールも、うっかり忘れてしまったり、守れなかったりすることもあるでしょう。そんな時、どのように対応するかをあらかじめ決めておくと、感情的な衝突を避けやすくなります。頭ごなしに叱るのではなく、「ルールではこうなっていたよね。次はどうすれば守れそうか、一緒に考えてみようか」といった建設的な声かけができるように、親自身の心の準備も大切です。
無理なく続けるための工夫と親の姿勢
ルールは決めて終わりではありません。家族みんなで無理なく続けていくための工夫や、親として大切にしたい姿勢があります。
- 親自身が見本を示す: お子様に「デジタルを使わない時間」を求めるなら、親自身もそのルールを実践することが何よりも重要です。親が食事中にスマホをチェックしたり、寝る直前までSNSを見ていたりするようでは、お子様からの信頼を得ることは難しいでしょう。
- 完璧を目指さない: 最初からすべてがうまくいくとは限りません。ルールが守れない日があっても、必要以上に気落ちしたり、お子様を責めたりしないことです。「昨日は難しかったけど、今日は頑張ってみようか」といった柔軟な姿勢で、根気強く続けることが大切です。
- ポジティブな変化に目を向ける: ルールを作り、「デジタルを使わない時間」ができたことで、家族の会話が増えた、お子様がスッキリ起きられるようになった、といった小さな良い変化があったら、ぜひ言葉にして伝えましょう。ポジティブなフィードバックは、お子様のモチベーション維持につながります。
- 定期的に見直す: お子様の成長や家族の状況は変化します。一度決めたルールも、数ヶ月に一度など定期的に家族で話し合い、見直す機会を持つことで、より実情に合った、継続可能なルールに育てていくことができます。
まとめ
思春期のお子様と「デジタルを使わない時間」に関するルールを作ることは、単に利用を制限することではなく、家族のコミュニケーションや健康、そしてお子様の自律性を育むための前向きな取り組みです。
「寝る前や食事中はデジタルを使わない」といった具体的な時間帯に焦点を当てることで、話し合いのポイントが明確になり、お子様もルールを受け入れやすくなるかもしれません。無理なく続けられるスモールステップから始め、親子で話し合いながら、家族にとって心地よいデジタルとの付き合い方を見つけていってください。このプロセス自体が、お子様との信頼関係を深める貴重な機会となるはずです。