友達関係も大切に。思春期の子と「デジタルでのつながり方」を話し合うルール
思春期のお子様を持つ親御さんにとって、お子様のデジタル利用は尽きない悩みの種かもしれません。特に、お子様がデジタルツールを通じて友達と活発に交流している姿を見ると、「使いすぎなのではないか」「何かトラブルに巻き込まれるのではないか」といった不安を感じることもあるでしょう。
しかし、この時期のお子様にとって、友達との繋がりは非常に重要です。デジタルでのやり取りが、友達との関係を維持し、深めるための大切な手段となっていることも少なくありません。こうした状況で、一方的に利用を制限しようとすると、お子様の強い反発を招き、親子関係が悪化してしまうのではないかと心配されている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、思春期のお子様の「友達関係とデジタル利用」という視点から、お子様の気持ちを尊重しつつ、家族みんなが納得できる健全なデジタル利用のルールを話し合うためのヒントと具体的なステップをご紹介します。
なぜ思春期の子どもにとってデジタルでの友達との繋がりが大切なのか
思春期は、親から精神的に独立し、友達との関係が生活の中心となっていく時期です。デジタルツールは、学校外でのコミュニケーションや情報交換、共通の趣味を楽しむための重要な手段となります。
- 常時繋がっていたい気持ち: LINEやSNSを通じて、友達とリアルタイムで繋がっていることが安心感につながることがあります。
- 集団への帰属意識: グループLINEでのやり取りや、流行しているゲームを一緒にプレイすることで、「仲間外れになりたくない」「みんなと同じでいたい」という気持ちを満たします。
- 自己表現と承認: SNSなどで自分の考えや日常を発信し、友達からの反応を得ることが自己肯定感に繋がることもあります。
これらの背景を理解することは、デジタル利用に関するお子様の行動の動機を知る上で不可欠です。単なる「暇つぶし」や「遊び」ではなく、お子様にとっての重要な人間関係や心理的なニーズが背景にあることを認識することが、ルール作りの第一歩となります。
友達とのデジタル付き合いで親が抱きがちな不安
お子様のデジタル利用の背景を理解した上で、親御さんが具体的にどのような点に不安を感じるのか整理してみましょう。
- 時間に関する不安:
- 友達とのやり取りが終わらず、利用時間が長時間になる
- 夜遅くまでメッセージのやり取りをして、睡眠不足になる
- デジタル利用のために、勉強や家事の時間が削られる
- 人間関係や精神面に関する不安:
- 既読スルーやグループからの除外といったトラブル
- SNS上でのいじめや悪口
- 「映え」を気にするあまり疲れてしまう(SNS疲れ)
- オンラインでの人間関係が現実より優先されてしまう
- 安全面に関する不安:
- 個人情報の流出(住所、学校名、写真など)
- 不適切な内容に触れる可能性
- 知らない人と繋がってしまうリスク
これらの不安は、お子様を心配するからこそ生まれるものです。この不安を一方的に押し付けるのではなく、なぜそう感じるのかをお子様に伝えることが、建設的な話し合いにつながります。
友達関係を尊重しながら「デジタルでのつながり方」を話し合うステップ
お子様の友達関係を大切にする気持ちに寄り添いながら、親御さんの不安も解消できるようなルール(家族の約束)を作るためのステップをご紹介します。
ステップ1:親御さんの「なぜ不安なのか」を整理する
漠然とした不安を具体的にしましょう。「ゲーム時間が長い」ではなく、「友達とのオンラインゲームが終わらず、就寝時間が遅くなり、翌日の学校に響くのではないか」というように、具体的な状況とその結果予測されるリスクを明確にします。
ステップ2:お子様の「なぜデジタルで友達と繋がるのか」をじっくり聞く
お子様の言い分に耳を傾ける時間を作ります。「どうしてそんなにLINEするの?」「ゲームばかりして」といった問い詰めではなく、「友達とLINEしてる時って、どんな話してるの?」「みんなでゲームするのって楽しい?」など、興味を持って尋ねる姿勢が大切です。友達との繋がりがお子様にとってどれだけ大切か、どのようなやり取りをしているのかを理解することに努めます。
ステップ3:「友達との繋がりも大切だけど、こういう心配があるんだ」と正直に伝える
ステップ1で整理した親御さんの不安を、お子様を責めるのではなく、「あなたのことが大切だから心配している」という愛情ベースで伝えます。例えば、「友達と話すのが楽しいのはわかるよ。でも、夜遅くまでスマホを見ていると、目が疲れるし、朝起きるのが辛くなるんじゃないかなって心配なんだ」というように、具体的な行動とその影響、そして親の気持ちをセットで伝えます。
ステップ4:「どうすればお互い安心できるか」を一緒に考える
ここが最も重要なステップです。親が一方的にルールを押し付けるのではなく、「どうしたら友達との繋がりも大切にしながら、体調も崩さず、お母さん(お父さん)も心配しすぎずに済むかな?」と問いかけ、お子様と一緒に解決策を考えます。
例えば、
- 「友達とのLINE、何時までなら大丈夫そう?」
- 「夜遅い時間に来たメッセージは、次の日の朝返すっていうのはどう?」
- 「ゲームは楽しいけど、眠る時間には終わらせる工夫、一緒に考えられないかな?」
- 「もしオンラインで嫌なことがあったら、誰に相談できると安心できる?」
といったように、お子様の意見や提案を引き出しながら、現実的で無理のない範囲で「家族の約束」を形作っていきます。
ステップ5:具体的な「デジタルでのつながり方」に関する約束を決める
話し合いを通して合意できた内容を、具体的な言葉で明確にします。以下は、友達関係に配慮したルール作りの視点から考えられる約束の例です。
- 時間に関する約束:
- 「就寝時間の〇分前には、友達とのデジタルでのやり取りを終える」
- 「寝室にはスマホを持ち込まない」
- 「友達とのオンラインゲームは〇時までにする」
- 内容・マナーに関する約束:
- 「友達への悪口や、人が嫌がる内容は送らない・書き込まない」
- 「友達との会話の秘密は守る。ただし、命に関わることや犯罪に関わることは除く」
- 「オンラインで知り合っただけの人に、個人情報(本名、学校名、住所、顔写真など)は教えない」
- 「友達が写っている写真や動画を、相手の許可なくSNSなどに投稿しない」
- 安全・相談に関する約束:
- 「オンラインで困ったこと、嫌なことがあったら、すぐに親や信頼できる大人に話す」
- 「知らない人からのメッセージや友達申請は、受けないか、必ず親に相談する」
これらの約束は、お子様自身の安全と健やかな成長を守るためのものです。一方的な禁止ではなく、「どうすれば自分自身を守りながら、友達とも楽しく繋がれるか」という視点でお子様と一緒に考えることが重要です。
無理なく続けるためのポイント
決めた約束は、完璧に守られることよりも、家族が意識し、必要に応じて見直していくことの方が大切です。
- 親子で約束を共有し、見えるところに貼る: 何を約束したか、親子でいつでも確認できるようにしておくと良いでしょう。
- 頭ごなしに叱らない: 約束が守れなかったときも、なぜそうなったのか理由を聞き、「どうすれば次から守れるか」を一緒に考えます。責めるのではなく、次に繋げる視点を持ちましょう。
- 定期的に見直す: お子様の成長やデジタルツールの変化に合わせて、約束の内容が合っているか、無理はないかなどを定期的に親子で話し合い、必要に応じて見直します。
まとめ
思春期のお子様にとって、デジタルは友達との大切な繋がりを維持するための重要なツールです。親御さんの不安がある一方で、お子様の気持ちや社会的ニーズを理解し、尊重することが、ルール作りの成功には不可欠です。
一方的な制限ではなく、「なぜ」を共有し、お子様の意見に耳を傾け、「どうすればお互いが安心できるか」を一緒に考えるプロセスを経ることで、お子様自身が納得し、自律的なデジタル利用へと繋がる可能性が高まります。
今回ご紹介したステップや具体例が、親子の対立を避け、信頼関係を築きながら、お子様にとって健全な「デジタルでのつながり方」を共に考える一助となれば幸いです。デジタルルールは、お子様を縛るものではなく、家族みんなが心地よく、安心してデジタルと付き合っていくための「家族の約束」なのです。